倉敷市から車で走ること約1時間30分。周囲は山林ばかりという山奥にある岡山県高梁市吹屋は江戸時代に銅山と弁柄(ベンガラ)という赤色顔料によって大きく繁栄した地区であり、弁柄によって彩られた瓦屋根・格子・外壁の「赤い町並み」が残る国の重要伝統的建造群保存地区です。
さらに弁柄が日本的色調「ジャパンレッド」として海外で高く評価されたことにより、2020年6月には「ジャパンレッド発祥の地」として日本遺産にも認定。そんな全国でも珍しい赤い景観の町並みを散策してみようじゃないですか!
実はそもそもの目的地は吹屋ではなく羽山第二トンネルだったのです。山奥にすごい隧道があるという話に惹かれて向かったものの、直前まで来てまさかの全面通行止め…。しかも期間が前日からという不運。
倉敷市からわざわざこんな奥地まで来たのに…何の成果も得られずに…、とその時ふと思い出したのがベンガラ屋根の集落の存在。調べてみるとBINGO!それがここよりさらに少し奥地に行った吹屋という地区だったのです。
Uターンをして吹屋へ向かう最中に気づいたことが1つ。そもそも羽山トンネルって吹屋との往来のために作られたものらしいのです。つまり通行止めであろうがなかろうが結局は吹屋に導かれていた。これってデスティニー!?
弁柄の里・吹屋
赤い家屋が並んでいるという吹屋のふるさと村を次なる目的地にセット。と、その道中に面白そうな場所を発見したので寄り道です。
吹屋銅山笹畝坑道
弁柄は銅山で産出される鉱石を原料としている、ということはここが弁柄の母!?
なかなか見応えのある坑道らしいのですが、料金所にはカーテン。笹畝坑道は火・水・木・金と週の半分以上が休館日。今回はその木曜日にあたったわけで…仕方あるまい。
ベンガラ館
再びふるさと村に向け移動を始めてすぐの交差点に『←ベンガラ館200m』という看板を発見。200mなら近いし先に寄って行きますか。
しかしここもまた火・水・木・金が休館日だった…。これは訪れる観光客が少ないからなのだろうか?それとも従業員の人手不足とか?そんなこんなでふるさと村の駐車場に何事もなく到着しましたが、何事もないのにも困ったものです。
ふるさと村
かなり広い駐車場に車は数えるほど、そしてこの色褪せた観光案内板を見てしまっては嫌な予感が脳裏をよぎるじゃないですか…。
案内板に掲載された6か所の観光スポットのうち、すでに2か所は敗北済み。さらにふるさと村入口にある案内所は開館しておりません。ベンガラ屋根をはじめとして確かに赤色が主張しておりますが、こんな様子で本当に観光ができるのだろうか…?
村に入ると本格的にベンガラ屋根の家々がズラリ。タイムスリップしたようなこの光景は…嫌な予感から一転、テンションが少しずつ上がり始めます。
これは赤色もさることながら旧宿場町のような雰囲気が良い!こんな山奥で住民もかなり少ないだろうに、綺麗に整備もされています。
これらの屋根瓦は石州瓦だそうですが、石見(島根県)で作られたものではなくここで製造されたもの。わざわざ現地から職人を呼び寄せて瓦を焼き、吹屋のベンガラで色付けをしたのですって。
こちらの建物は観光案内所&診療所。診療は毎月第1・3・5木曜日のみとかなりレア。そしてこの日は診療日である第1木曜日!
ならば早速診てもらいましょう!じゃなくて見せてもらいましょう。館内では観光案内のパネルと診療所の窓口が肩を並べる、これはなんとも特異な光景だ。
観光地ながらもバスの本数は1日に5本だけ。
人口が気になって調べてみたところ、吹屋地区の住人は100人少々とやはり少ない。しかしながらお店などは結構しっかりと揃っているのはさすが観光地。ピックアップして紹介していきましょう。
観光向きなお店は揃っている
お土産店は数店あり、例えばベンガラ染の鞄や小物などを販売する工房直売店は目を引くところ。
壁にかけられた傘が目を引くここもお土産店。
なぜこんなにところに傘を並べてるのか?と思ったら、この傘が水に濡れると模様が浮き出て乾くと消えるという商品で、それを実演していたのです。ベンガラとは関係なさそうですが、お土産としては面白い。
郵便局もベンガラスタイルで営業中。観光客向けの記念切手や葉書なども販売しており、ここの窓口で投函すると風景印を押してくれるとか。
いやーまさかここに来て占いの館があるとは驚きましたね。しかし完全予約制ということはふらっと訪れた観光客には難易度が高い。誰をターゲットにしているのだろうかという疑問は深まります。
飲食店も思っていた以上に営業しています。カフェや喫茶は数軒あるので休憩場所に困る心配は日中ならほぼ無用でしょう。
スープカレーつくし
まさかこんな場所でわが街のグルメであるスープカレーのお店に出会うとは…。
ならばこれも運命でしょう。スープカレーの本場である札幌の人間が、あえて岡山県の山奥でいただいてみようじゃないですか!
値段は思いのほかリーズナブル。いわゆる観光地価格ではないばかりか、札幌のスープカレー店の相場よりも安いくらいです。
食べ方に関しての説明を読むと…
スープをご飯にかけて食べる人をたまに見かけますが、それをすると皿がグチャグチャに汚くなる上にスープを味わいづらい。なのでこの説明のようにどちらかで食べるのが良いでしょう。まぁでもどう食べようが自由なんですけどね。
というところにやってきたのは、深皿に盛られたご飯と注げる器に入れられたスープという珍しいスタイル。これはスープをご飯に注ぐための布石!?
やはりスープカレーに不慣れな人向けに、ご飯にかけるやすくしているのかな?ということは味もルーのカレーに寄せた感じになっているのだろうか…?本州で食べたスープカレーはスープカレーとは全然別物という経験が何度かありまして…
と空振りの覚悟を決めた上での一口目。え…、正統派のスープカレーですよこれ!なんなら美味しいですし、この価格と内容のまま札幌で出店したとしたら結構人気になるんじゃないかと思えるレベルです。よもやよもやの驚き、ごちそうさまでした!
郷土館
観光案内板にあった6つ施設のうちの第3ポイントとなる郷土館はやはり…。4月~11月は毎日開館していますが、12月~3月はもはやおなじみの火・水・木・金の休館。
旧片山家住宅
第4ポイントは、近世弁柄商家の典型と高く評価されて国の重要文化財に指定された旧片山家住宅。しかしここは開館していたもののスルー。なぜなら入館料500円は郷土館と合わせた料金なのに郷土館が休みなんですもん。ここだけのために500円払うのも…ね。
旧吹屋小学校
続いて第5ポイントの旧吹屋小学校の前までやってきましたが…、おやおやこの重機、不穏な気配じゃないですか。
予感的中…。当時は保存工事の真っ最中でして、これ以上は近づけない!(現在はもう修復を終えています)
ラ・フォーレ吹屋
小学校の横にあるこれまた元々学校っぽい雰囲気の建物は現在ホテルとして営業中。宿泊者以外でも喫茶コーナーの利用は可能です。
こんなところで吹屋ふるさと村の探索は終了。残すは少し離れた場所にある観光案内板第6ポイントに向かうのみです。
広兼邸
ふるさと村から約3km移動した先で目に飛び込んできたのは…なにこれ、山賊達の砦!?
山肌に積み上げられた石垣が城郭を成しているようなこの建物は、銅山とベンガラの原料製造をで巨大な富を築いた広兼氏の邸宅。こんなの城だったと言われても信じますし、山賊の砦だったと言われても納得しちゃいます。
でもどうせ…休館日…ではなかった!ならば見せてもらおうか、江戸時代の富豪の邸宅とやらを。
と行きたかったのですがここでタイムオーバー。笠岡のモンサンミッシェルと呼ばれる場所へ向かうためにもう戻らなければならない時刻になってしまったのです。
ちょっと駆け足の散策と昼食時間を合わせて約2時間。ここに銅山や広兼邸などの施設見学を加えると3~4時間くらい楽しめる弁柄の里・吹屋。行くのに少々時間を要しますがここは楽しめる上にそこまで観光客も多くない穴場ですよ!
吹屋ふるさと村 | |
住所 |
岡山県高梁市成羽町吹屋838 |
所要時間 |
2時間程度 |
駐車場 |
無料 |
公式URL | https://fukiya-japan.red |
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