『麓から見ても綺麗なこの十勝岳。ならば山頂にはもっと壮大な光景が広がっているのでは?』という登山初心者の思いつきから行った十勝岳山頂アタック!
前回は十勝岳温泉凌雲閣から上ホロカメットクを経由するコースでしたが、今回は望岳台から十勝岳山頂へ。そんな単独登山紀行がこれから登ってみたいと考えている方のお役に立てれば幸いです!
十勝岳登山 望岳台コース
十勝岳は北海道の真ん中に位置する大雪山系の1つで山頂の標高は2077m。いくつかある登山ルートの中でメインとなるのは2つ。
- 十勝岳望岳台(930m)からまっすぐ山頂を目指す最短距離コース
- 十勝岳温泉(1280m)から上富良野岳と上ホロカメットク山を経由する縦走コース
前回は縦走コースでのチャレンジでしたが、今回はそれよりも時間を要するという望岳台コースで山頂を取りに行きます!
望岳台から十勝岳山頂までの道のりは全長約5.2km。事前調査から往復8時間を見積もっていますが、果たして結果やいかに!?荷物や装備、注意点などと合わせて最後にまとめております。
十勝岳望岳台防災シェルター
駐車場かつ登山の起点となるのが望岳台の入口にある防災シェルターです。24時間利用でき、トイレ・飲料自販機・休憩所を完備しているので出発前の準備をここで整えます。
館内は綺麗に管理されており、トイレはなんとウォシュレット付きの水洗!以前はボットン式で臭うトイレしかなかったのに快適な施設ができたものです。
十勝岳山頂へ登山開始
登山開始は2022年9月22日午前8時、雲ひとつない快晴、登山口はほぼ無風で気温7℃、この日の美瑛市街地の最高気温は24℃というコンディションでした。登山口から山頂にかけては市街地よりも700m~1800mほど高い位置になるため、気温は5℃~11℃ほど下がる計算になります。
気温上昇と朝霧が消えるのを待つために8時からの登山開始でしたが、登山者の中では後発組。だいたい6時前後の出発が多いようですね。それでも下界はまだ雲海のような朝靄がかかっている状況です。
登山開始 → 十勝岳避難小屋
トイレよし!食料よし!飲料よし!防寒具よし!午前8時7分、うっすら見える山頂を目指して望岳台を出発!山頂にかかっているのは雲ではなく全て火口からの噴煙(硫化ガスなど)、十勝岳は活火山なのです。
約10分経過
ほぼ直線的に登り続けること10分、小さな岩が増えてきて歩きづらさがUP。
振り返ると見晴らし良好!視界を遮る背の高い木もほぼなく、森林限界も近いようです。
約40分経過
登山路の様子に大きな変化もなく、ずっと山頂の方角を向いたまま登り続けています。気温は一桁でしょうが、直射日光を浴びながら登っているのでむしろ暑い!汗をかき始めたのでウインドブレーカーの前を全開、それでもやや暑いくらい。
ここらで下界を振り返ってみると…
さらに10分ほど登ってから振り返ってみると…、ほとんど景色が代わり映えしない!
ご覧の通り登ってきた道はほぼ真っすぐ。ゆえに景色が単調で…、正直すでに飽きている自分がいましたよね。
美瑛岳分岐(約1時間経過)
望岳台から2.0km進み、300m強登ってきた標高1260m地点で美瑛岳か十勝岳かの分岐です。この両山を縦走する猛者もいるようですが、自分は最短で十勝岳を往復するのみ!なにせここから山頂まであと1017mも上昇せねばならないのですから…。
十勝岳避難小屋(70分経過)
とりあえずのチェックポイントである避難小屋が見えた~。望岳台からここまで2.3km、ほぼ同じよう景色で緩急もなく一本調子で登り続ける道のりに体力と気力がだいぶ削られた気がします。
ここで振り返ってみても、やっぱり見慣れた景色だった…。もうしばらくは振り返るのをやめよう。
避難小屋の中は寝られるだけのスペースまであって思っていた以上に十分な設備。
しかも毛布やガスなども保管されていて、これなら緊急時でも生還できる!ただしトイレはありません。
避難小屋 → 山頂
単調さにすっかり飽きていましたが、避難小屋を越えるとやっと変化が訪れます。もはや道はなくなり、大きな岩を縫うように己で道を探して登る!一応目印として岩に矢印が書かれていたりするので悪天候じゃない限り遭難の心配はありません。
これがなかなか急斜面なわけで足への負担がっ…、ここで運動不足という登山準備不足が露呈し始めます。給水をはさみつつ登って行きますが、心肺への負担が大きい第一波はここでした。ハァハァ…。
巨岩ゾーンを抜けると足場は少し良くなり再び道が現れ、つづら折りにジグザグと登る道がしばらく続きます。えぇ、もちろんここでも飽きが訪れますとも!
しかしながら迫りくる稜線に刺激され、避難小屋に至る前に比べればモチベーションは高めで維持できています。
白っぽい谷となっているのは噴火口の跡でしょう。
稜線に出る ~2時間40分経過~
思えば遠くへ来たもんだ。まだここでは振り返りませんよ、どうせ見慣れた景色なのですから。遠くへ来ましたが山頂はまだ遠い…。でもここから少しの間は傾斜も緩く、歩きやすいので体力を回復できそうです。
ここから視点を左に向けると美瑛岳、とその手前にある大きなくぼみ。これは約1000前にできたスリバチ火口です。
これをもう少し進んだ所から振り返って見ると…景色に変化が出た!これなら火口の大きさも伝わりやすいだろう良いアングル。
火星のような景色に吹く強風
緩斜面が続くので体力回復できそうと言いましたがあれは嘘です。風がめちゃくちゃ強い!さっきまでは風もなく暑かったのに…、涼しいを通り越して一気に寒い!耳が冷たいを越えて痛い!鼻水も垂れるし、体力が削られる!
稜線に出てからは壁となるものがない荒野。風もやりたい放題で吹きさらしてくれるわけです。ほんと火星みたいな光景の場所ですが、強風で楽しむ余裕がありません。
あれは火星探査隊が立てていった旗では?
なんてことを考える余裕もないほどに風が厄介!山頂まで風がこの調子だとするならば食事をするのも厳しいぞ。お腹も空いてきたのに…。最後の急斜面が壁となって風を弱めてはくれませんかねぇ…?
山頂までの最大斜度
最後にして最大の体力消耗ポイントがやってきました。転倒にさえ注意すればさほど危険なわけではありませんが、斜度がきつい!
つまりは足への負担が大きく、ここで何度か足をつってしまうほど…。心臓破りというより、ふくらはぎ破りの急坂だ!
もう足が生まれたての子鹿みたくなってきた…。という状況をごまかしながら最後の坂を登り続けること50分…ついに…
山頂到達! ~約4時間経過~
標高2077m、十勝岳のてっぺん取ったぞーーーーー!写真や動画を撮影しながらなのでペースとしては普通よりも遅めですが、登りだけで4時間かかりました。
まずは今歩いてきた道のり(北西)を振り向きながら、『お疲れ様、マイ子鹿フット。下りも持ってくれよ…』と自分で労をねぎらいます。それに対して十勝岳の噴煙はモクモクとお元気なようで、風向きの影響もあって駐車場からすでに匂っていたほど。
北東方向に見える大雪山系の山々のラインが美しい。こっちへ進めばトムラウシですが、立て札には18.6kmという文字が…。これを縦走する猛者…いや変態は本当にすごい。自分は生きて帰れる気が全くしません!
南西方向には富良野岳や上ホロカメットク山が見えます。山頂から見る景色ではこの方角が一番綺麗かもしれません。十勝岳温泉コースを選んだ場合は向こうからやってくるわけです。
というわけで、ここを昼食地とする!幸いなことに風は少し弱まり、岩場の影ならば微風状態。ならばこの景色を見ながらエネルギー補充をするっきゃない!そしてここで食べるおにぎりは格別に美味い!叶うならば熱々の味噌汁が欲しい!
山頂の空気と食事を堪能していたら1時間も滞在しており、気づけばみんな下山を始めていた…。まだ13時なのに誰もいないなんて、さすが山人は行動が早い。じゃあ我々もそろそろ下山するとしますか。
復路は撮影もあまりせず急ぎ目で、無事明るいうちに戻って参りました。果たして下りの所要時間は!?
望岳台コースのまとめ
初心者が登った経験からのまとめです。
登山日の気候条件
快晴で陽射しが暑いくらい。気温は登山開始時7℃、山頂はおそらく一桁で吐息が白い、下山完了時は体感で推定18℃。稜線を越えたあとの強風以外はかなりの登山日和だったと言えるでしょう。
所要時間
往路4時間+復路2時間30分+山頂休憩1時間=全行程で7時間30分でした。登山初心者の自分が約5kgの荷物を背負って、喋りながら、撮影をしながら歩いてこの時間です。普通に登れば3時間半で登頂できそう。復路は撮影は少しだけ&ペース早めでの結果です。
服装
陽射しのおかげで序盤は長袖シャツ・半袖シャツ・ウインドブレーカーの3枚で汗をかくくらい。しかし強風に襲われると一気に寒いくらいに。山頂ではフリースを追加しました。風を通さない防寒具(ウインドブレーカー類)は必須、インナーダウンかフリースを1枚持参が推奨という感じです。
装備
滑らない靴は必須。スニーカーでも登れますが靴底が厚くないと疲労度が高いでしょう。登山ポールは下りで活躍してくれるので推奨です。熊鈴はみな装着してますが、山頂往復ならば森林がないので鈴の出番がないような。手袋類はあれば良し程度。活火山ですがヘルメット装着者はほぼいませんでした。
飲食物
飲み物は少し多めに飲む自分で食事分も含めて1.5リットルがジャストでした。食料なしで山頂を目指すのは初心者にはリスクがあります。せめてカロリーメイトなどの簡単な食料くらいは持参するのが無難。山頂で食事をする人が多数です。
駐車場
70台ほどのスペースがありますが、繁忙期は平日でも早朝に満車は当たり前。自分は朝7時半の到着でもほぼ満車でした。ある程度の路駐もできますが、休日はさらに早めに来ないと難しそう。紅葉期の休日は登山以外の観光客で長蛇の列ができるそうですし。
トイレ
トイレは出発地点の防災シェルターのみ。途中の避難小屋にもないので携帯トイレを持参する必要があります。ただし登山中は汗をかくので小の回数はかなり減ります。念のため100均で購入した携帯トイレを持参していますが、今までの登山では一度もしたくなったことすらありません。
携帯の電波
全体を通してほぼ電波があり、万が一のSOSは呼べるでしょう。登山口から避難小屋あたりまでは少し電波は弱く、それより登ると少し強くなります。山頂でも生放送できるくらいに電波は通じています。
難易度
危険な箇所は最後の急斜面くらいです。落石・滑落の心配はほぼなし。ある程度の体力さえあれば初心者でも平気、技術的なものは不要でしょう。
動画
望岳台か?十勝岳温泉か?
最後に望岳台コースの感想をもうひとつのメインルートである十勝岳温泉コースとの比較でお伝えします。時期も天候もほぼ同条件で上った十勝岳温泉コースがこちら。
結論から言えば十勝岳温泉からの縦走コースがおすすめ!
景色
望岳台コースはとにかく景色が単調。色味も少なく、登りも下りも岩石だらけで飽きてきます。縦走コースならば景色も少しずつ変わり、かみふらの岳や上ホロカメットクからの景色も抜群!
距離と時間
望岳台は片道5.2kmに対し、縦走だと片道6.2kmと距離の差はあります。しかし十勝岳温泉は望岳台よりも300mほど標高が高いスタートのため、疲労は望岳台の方が大きいでしょう。所要時間は縦走のほうが往復で30分ほど長く要するかもしれません。
安全度
縦走コースには一部気をつけないといけない場所があります。と言ってもそこまで危険ではありませんが、お年を召した方には望岳台のほうが安全です。
感想
自分的には望岳台から登るのは1度でいいかなと。十勝岳山頂の景色は美しいのですが、また十勝岳山頂を目指すにしても縦走コースで行きます!望岳台コースは単調すぎるために肉体だけじゃなく精神的にも疲労感が。
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